地の利、人の輪、さらしなネット

ゆうき内科クリニック 結城 昌慶

2017/7/19

この度、私は更級医師会理事に就任させて頂きました。
私は、平成8年4月から篠ノ井総合病院に勤務し、平成16年10月、篠ノ井布施高田で開業致しました。篠ノ井地区で勤務医として8年、開業医として12年となりました。勤務医、開業医、それぞれの立場から川中島・篠ノ井地区での地域医療を経験致しました。地の利、人の輪が、この地域の良好な病診連携の鍵になっていると思います。

地の利:犀川と千曲川に囲まれた川中島

北部の長野地区の大病院は群雄割拠の時代となっているようです。各病院は開業医の登録、病診連携の会などで、開業医の取り込みに励んでいます。開業医は紹介先を何処にするのか、選択肢が多く悩むことがあるようです。
一方、南部の篠ノ井地区では、紹介先は篠ノ井総合病院がほぼデフォルト(初期設定値)となっています。犀川と千曲川に囲まれた川中島・篠ノ井地区の中心に篠ノ井総合病院があり、診療所と病院は1:1対応となり、紹介先の第一選択が篠ノ井総合病院となっています。
無論、患者さんの要望があった場合や、篠ノ井総合病院が満床で受け入れ不能であれば、他の病院へ紹介することになります。

平成 20年4月から篠ノ井総合病院の医師会急病センター(月~金:19:00~23:00)に更級医師会・千曲医師会の医師が従事しています。
普段は診療所から篠ノ井総合病院へ患者さんの紹介・救急依頼をお願いしていますが、夜間は医師会医師が医師会急病センターにて篠ノ井総合病院をサポートしています。
お互いに助け合うことで、診療所と病院の持ちつ持たれつの良好な関係を維持できているように思われます。

また、平成25年9月からは篠ノ井総合病院に総合診療科が開設され、紹介窓口が専門、救急、総合の3つになり、患者さんの病態に応じた紹介が出来るようになり、スムーズな紹介が出来るようになり多いに助かっています。

人の輪:篠ノ井総合病院“あい講堂”が接点

長野市医師会は会員数約590名とのことですが、長野市医師会総会、日医生涯教育講演会等の出席者はそれほど多くないとのことです。
更級医師会は会員数約160名ですが、総会、学習会の出席率は長野市医師会よりも高いようです。大所帯になると会員相互の連携が疎になるため、百人程度の会員数が知り合うためには丁度良いのかもしれません。

また、医師会主催の日医生涯教育講演会は、篠ノ井総合病院の“あい講堂”で2ヵ月に一度の割合で開催されています。病院の中で学習会が開催され、その後情報交換会が設けられています。勤務医と開業医がお互いに“顔の見える関係”になり、患者さんを紹介し易くなり、病診連携がスムーズにいく下地になっています。

さらしなネット:地域医療ネットワーク

平成28年から、篠ノ井総合病院と更級医師会の診療所の間に、“さらしなネット”という地域医療ネットワークが構築されました。篠ノ井総合病院と更級医師会所属の診療所の間に専用パソコン、専用ネットワーク回線を用いて病診連携を図るシステムです。
診療所において患者さんに個人情報開示を承諾して頂ければ、紹介先の篠ノ井総合病院の患者さんのカルテ開示が可能となり、診療所から専用パソコンでカルテ記録・検査・画像データを閲覧することが出来るようになります。病院での検査結果を知ることで、診療所で重複した検査をすることを避けることができます。また、患者さんが入院された場合には、入院してからの経過を知ることができるため、退院後の受入もスムーズになります。

地の利のある川中島・篠ノ井地区で、人の輪、“顔の見える関係”を基盤とし、“さらしなネット”が更に病診連携を深めるツールとなることを期待しています。微力ですが、引き続き地域医療に貢献出来るよう努めていきたいと思っていますので今後とも宜しくお願い致します。