在宅血液透析療法についての紹介

JA長野厚生連南長野医療センター篠ノ井総合病院
腎臓内科顧問 長澤正樹

高齢化社会を迎えており医療制度は今後ますます厳しさを迎えてくると考えられ、高齢の患者さんでは通院が問題となってきます。そのため国は在宅で治療が進むように医療制度を変えようとしています。

わが国の透析患者さんの97%が医療機関に通院して治療をうけており透析を開始する平均導入年齢は70歳で、透析患者さん全体の平均年齢は68歳で20年前と比較すると透析開始年齢が8歳、全体の透析患者年齢では9歳と高齢化がすすんでいます。このため通院が困難となる方が増えてきています。

腎臓の機能が低下し体内の老廃物を排泄できなくなった状態を腎不全といい、現在全国の透析患者さんは33万人ほどおり透析療法を永続的に行っています。

その原因となる病気で一番多いのは糖尿病で次に慢性腎炎です。
以前は慢性腎炎が一番多かったのですが20年前から糖尿病が一番となり透析を開始する人の43%が糖尿病です。透析患者さんは全国で毎年約5000人、長野県では毎年70人ほど増加しています。

腎不全の治療法として腎移植が一番いいわけですが移植腎が足りないことより透析療法を選択しなければなりません。

透析療法には血液透析療法と腹膜透析療法があり、一般的に血液透析療法は医療施設にて治療を行います。通院回数は1日おきで1週間に3回通院し、1回の治療時間は4から5時間ほどかかります。

施設の血液透析では治療日と時間が決められており、それに合わせて通院しなければなりません。

健康な人の腎臓は24時間働いており尿を作っていますが腎不全では腎臓に代わり透析を行います。1日おきの通院で治療しますが週末は治療日が2日空くことになり厳しい食事、水分制限が必要となります。

この間は腎不全が悪化し心臓病、脳卒中などの危険が高くなります。

次に在宅血液透析療法について紹介します。在宅血液透析は、自分の家で血液透析を行う治療法で治療計画を自由に決めることができます。

在宅血液透析の定義ですが、厚労省の通知では「維持血液透析を必要として、かつ安定した病状である患者さんで在宅にて血液透析を行うこと」となっています。

つまり在宅血液透析療法は元気で自己管理が十分にできる患者さんが在宅で血液透析を行う治療であり、介護者、医療機関のバックアップが必要となります。

日本では2017年末で684名の在宅血液透析患者さんがいます。全体の0.1%ほどでわずかな比率です。

外国ではニュージーランドは15%、オーストラリア10%、カナダ3%と比率が高く積極的に行われています。当院でも6名の方が在宅血液透析を行っています。

在宅血液透析の特徴としては治療時間を自由に選ぶことができ透析時間、透析回数の縛りがありません。

一方、施設透析は治療回数が1ヶ月に14回までと決められており、ギリギリの治療量で決して十分な透析が行われていません。

この点で在宅血液透析は時間の制約がないため長時間、連日の透析が可能で自分の生活に合わせて十分な治療を行うことができます。メリットは、時間的に自由であり通院は月1回程度で済みます。

一般的に隔日または連日治療ができかつ長時間透析も可能であることより全身状態は安定します。そのため施設透析と比べ十分な治療ができ体調も良くなります。

血圧のコントロールも楽で飲み薬も大幅に減らすことができます。また、厳しい食事制限や水分制限もなくなり果物、野菜などほぼ自由に食べることができます。在宅治療のため家族と過ごす時間が増え安心感のある時間を過ごすことができます。

また、通院回数が減ることによりインフルエンザのような感染症に感染する機会がなくなるメリットもあります。

デメリットとしては経済的負担があります。具体的には水道代、電気代が自己負担になります。

機械設置や備品のための部屋のスペースが必要で電気の配線、水道の配管などの工事が必要となりその経費が掛かります。

その他に患者さんが自己管理できない場合は困難です。家族の方が介護する場合はその方の負担が大きくなります。在宅血液透析療法のメリット、デメリットを考慮して透析療法の選択を行っていただければ幸いです。