子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)について
みなさん、こんにちは。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)が今年度9年ぶりに定期接種として「積極的推奨」されます。
今回は子宮頸がんとHPVワクチンのポイントをまとめました。
① 子宮頸がんってどんながんなの?
子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんです。
他の部位にできるがんと比べて若い年代から発症するのが特徴です。
30歳代で子宮摘出術が必要になる(妊娠できなくなってしまう)方が日本国内で年間に約1,000人います。
また、子宮頸がんで亡くなる方は国内で年間2,900人程度(2019年)と報告されています。
子宮頸がんの90%以上がHPV(ヒトパピローマウイルス)の性行為感染症が原因であり、子宮がんの予防に「子宮頸がんワクチン」が有効です。
ただし、HPVワクチンの子宮頸がん予防効果は60~70%程度であるため、HPVワクチンと合わせて性交渉経験後は1~2年ごとの子宮頸がん検診を受けてください。
子宮頸がんは早期発見が可能ながんで、早期発見ができれば子宮頚部を一部切除するだけで済み、将来の妊娠・出産が可能です。
② HPVワクチンの副反応は大丈夫なの?
HPVワクチン接種後に見られる主な副反応として、
- 接種した部位の痛みや腫れ(10%以上)
- 発熱・めまい(1~10%)
- 注射による痛み、恐怖などをきっかけとした失神(1%未満)
などが挙げられます。
これらの副反応はHPVワクチン以外のワクチン接種時にもみられるものです。
③ 定期接種の対象年齢(高校1年)を過ぎてもHPVワクチンの効果はあるの?
性交経験によるHPV感染によって、ワクチンの予防効果が減少することが示されていますが、性交経験がある場合でも、ワクチンの予防効果がなくなってしまうわけではありません。
16歳ころまでに接種するのが最も効果的ですが、20歳頃の初回接種まではある程度有効性が保たれることや、性交経験がない場合はそれ以上の年齢についても一定程度の有効性があることが示されています。
➃ 9価ワクチン(シルガード9)を接種した方が良いの?
現在公費で受けられるHPVワクチンは、サーバリックス(2価HPVワクチン)とガーダシル(4価HPVワクチン)の2種類ですが、この他のHPVワクチンとして、シルガード9(9価HPVワクチン)があります。
サーバリックス及びガーダシルの子宮頸がん予防効果が60~70%であるのに対し、シルガード9では90%前後と言われています。
シルガード9は2021年2月から国内で販売が開始されているため、任意接種として接種することは可能です。
シルガード9の接種費は全額自己負担(およそ8万円程度)となります。
現在厚生労働省ワクチン分科会でシルガード9の公費接種を検討中のようですが、シルガード9の公費化を待ってHPVワクチンを接種することはお勧めしません。
HPVは一度でも性的接触の経験があればだれでも感染する可能性があり、HPVワクチンの種類より対象推奨年齢(小学校6年~高校1年相当)での接種が重要です。
⑤ HPVワクチンの積極的な勧奨が差し控えられていたのはなぜ?
平成25(2013)年4月にHPVワクチンが定期接種化されてから、接種部位以外の体の広い範囲で持続する疼痛等が報告されました。
これを受けて、HPVワクチンの副反応について、平成25(2013)年6月14日に専門家の会議が開かれました。
これまでに収集された医学的情報をもとに分析・評価され、ワクチン接種の効果と比較した上で、定期接種を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでした。
接種部位以外の体の広い範囲で持続する疼痛の副反応症例等について十分に情報提供できない状況にあることから、接種希望者の接種機会は確保しつつ、適切な情報提供ができるまでの間は、積極的な勧奨を一時的に差し控えるべきとされました。
令和3(2021)年11月12日に開催された専門家会議において、安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められ、積極的な勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当であると判断されました。