ロコモティブシンドロームと骨粗鬆症

南長野医療センター篠ノ井総合病院 整形外科 北川和三

ロコモティブシンドロームとは「運動器の障害によって、移動機能が低下した状態」のことを指します。

立つ、歩くという機能が低下して、進行すると人の生活活動の自立性を阻害します。

そうなると、介護が必要となるリスクが高くなる、あるいは介護を必要とする状態となります。

2007年10月に日本整形外科学会が提唱した概念です。

運動機能の障害をおこす頻度の高い疾患としては、骨粗鬆症、変形性関節症などの関節疾患、腰部脊柱管狭窄症などの脊椎疾患があります。

これらの運動器の障害が、高齢者の生活の質を著しく低下させていきます。

高齢者の生活の質を維持し増進させ、健康寿命を延ばすことが大切で、ロコモティブシンドロームに対する対策が必要です。

とくに骨粗鬆症は「骨強度の低下を特徴として、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義され、近年高齢女性の増加とともに、大きく社会的注目を浴びています。

骨粗鬆症は高齢者が年齢とともに骨量が低下するだけではなく、多くの場合筋肉量の低下も並行して起こっています。

骨粗鬆症による組織の脆弱化や腰痛などの痛み、易骨折性、筋肉量の低下に伴う運動量の低下により、活動性や移動能力が低下していきます。

 

ロコモティブシンドロームの予防と改善には、「運動習慣の獲得」、「適切な栄養摂取」、「運動器疾患に対する治療(骨粗鬆症に対する薬物療法など)」が重要となります。

運動習慣・運動介入は、運動機能を高めると同時に変形性膝関節症、腰痛、骨粗鬆症の症状などを改善していきます。

若い時にスポーツを行っていなかった人も、中高年には運動習慣をつけておくと有利です。

自宅で一人では運動できない人は、色々な運動施設、運動ジムを利用するのもいいでしょう。

運動習慣のない高齢者の方も、散歩、ラジオ体操、テレビ体操、地域での転倒予防教室などのリハビリ講習会に参加するなどして生活の中に運動を取り入れることが大切です。

また可能な方はインターネットで高齢者のリハビリ運動方法を調べることもお勧めです。

高齢者、リハビリ、運動、転倒予防などをキーワードとして検索すると、色々な方法が紹介されています。

高齢だから、痛いから何もしないではなく、年齢、病気、症状などにあわせて、各人に合った運動方法を見つけ、継続していくことが大切です。

栄養に関しては、バランスの取れた食事と十分なたんぱく質の摂取が大切です。

特に高齢者ほど低栄養に気を付け、十分なカロリーとたんぱく質を摂取することが、骨や筋肉にも大切で、体力・気力が落ちないようにする必要があります。