けがして、入院して、手術して分かった事

南長野医療センター篠ノ井総合病院 脳神経外科 外間 政信

私事ですが、還暦前ころから体力の衰えと肥満による不健康さを自覚し始めました。

体力低下と不健康の関係についてWHO(世界保健機関)は「高血圧(13%)、喫煙(9%)、高血糖(6%)に次いで身体活動不足(6%)は死亡の危険要因である」と2010年に声明を出しています。

このままでは野垂れ死にしてしまう危機感を覚え、一大決心をしてランニングを開始しました。
100〜500メートルから始め、今では走ることが習慣化し爽快感を感じるようになりました。

忘れることができない2019年2月1日の金曜日、
仕事が早く終わったので午後5時ころからランニングを開始しました。

自宅近くの岩野橋から千曲川の堤防道路を走ってオリンピックスタジアム経由で帰宅する予定でした。

帰宅路に南警察署西信号近くの地下道がありますが、その日は寒い日で地下歩道への階段が凍っていました。
ゆっくり降りていったのですが、最後の一歩で滑ってしまい右足関節を捻るように転倒してしまいました。

右足関節が外側に90度曲がった状態で変形し、ただ事では無いことが確認できました。

自力移動が出来ず、助けが必要でしたが携帯電話を持っていなかったので、じっと通行人が来るのを待っていました。やっと若い女性の方が通りかかり事情を説明して救急車を呼んでもらい命拾いしました。

後日、行きつけの床屋さんから、その地下道は利用者がほとんどいない歩道であることを聞き、改めてその女性の方が命の恩人であると思いました。

現場に到着した救急隊員は顔見知りで、私の勤務先の篠ノ井総合病院に連絡を取り搬送してくれました。

転倒・転落による年齢別搬送人数は60歳から急増していること、転倒アセスメントスコアでは65歳以上が2点であることなどが「転倒予防白書2016」に記載されています。

WHOは高齢者の転倒に関する危険因子として・生物学的リスク因子、・環境的リスク因子、・行動リスク因子を掲げています。

それらは単独でもリスクになり、また複数になれば外傷が重症化するとしています。

生物学的リスク因子(高齢)に環境リスク因子(危険な場所)が加われば、転倒は十分に予測でき、その対策として危険な場所は避けること、また事故後対策の用意をしておくことが大切であったことを学びました。

検査結果は右下腿骨の骨折で、入院し手術となってしまいました。
しばらくは車椅子と松葉杖がないと移動できず、普通に動ける事が如何に健康的な事であるかをひしひしと感じました。

全身麻酔で手術を受けましたが、あっという間に終了し気がついたら病室のベッドでした。

くも膜下出血の発症率が1万人に1人(年間)であるのに対し全身麻酔の合併症リスクは10万人に1~2人であるとの統計があり、全身麻酔が如何に安全性の高い手術手技であるかを学びました。

今後の人生を考えると病気に罹患して、再び全身麻酔を受けることも十分に考えられ、その予行演習として良い経験をしたと思っています。

入院生活での大きな楽しみは食事でした。
私の食事内容は1700Kcal、塩分8g、蛋白70g、脂肪50gでした。

成人男子の家庭食が約2700Kcalで、晩酌が加わると3000Kcal以上となると言われており、普段の食事が如何にカロリーオバーであるかを知りました。
腹八分目が健康にとっては良いことであることを理解しました。

最近、病院のレシピ本が健康食メニューとして良く売れているそうです。

入院中の生活は、動けない不自由さはありましたが看護師さんなど病院スタッフのおかげで、それほど辛く感じることはありませんでした。

他人への感謝の気持ちがあれば心の健康を維持できることを実感しました。

不安、不満の気分に陥ると人は交感神経に支配されます。
交感神経は戦いの神経で、身体を戦闘態勢に導き高血圧、高血糖の不健康状態にします。

感謝の気持ちに満たされれば、人は副交感神経に支配されます。
副交感神経は安らぎの神経で、気持ちをリラックスさせ、血圧を安定させて身体を健康状態にします。

術後経過は良好で、最近は5Km程度のランニングは出来るようになりました。
最後に、豊かな自然のなかで生かされ、日々の生活を楽しむことができる事に感謝して、私の体験記を終わります。